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『お産とコーチング』9~赤ちゃんが大きいとお産がきつい?|広島市安佐南の産婦人科 フジハラレディースクリニック

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コラムカテゴリー: その他

先日ある妊婦さんから、こういう話をされました。
前回の他の病院でのお産がかなりしんどくて大変でした。
予定日を少し過ぎて、超音波検査上赤ちゃんの推定体重が3500-3600gだったので、
「赤ちゃんがこれ以上大きくなるとお産がきつくてしんどくなるから、陣痛促進剤を使って分娩誘発をして赤ちゃんを産むようにしてみますか?あなたが希望されなければしませんけど、どうしますか?」
と、主治医の先生から言われました。
それで、考えて希望して、誘発してもらって産んだんですけど、かなり大変で、今もそれがトラウマになっています。
というお話でした。
この会話、皆さんどう思われますか?
予定日が過ぎて、産婦人科の先生からこのような話をされることは時々あることだし、いたってありがちな妊婦さんと先生の会話じゃないか、とお思いでしょうか?
私もそう思います。
妊婦健診の最中に、こういう会話はありがちですよね。
しかもこの先生は、予定日を過ぎて赤ちゃんもそこそこ大きいので、いきなり帝王切開をしましょう、と言った訳でもなく、また、お母さん本人の希望も聞かず分娩誘発の予定を決定した、という訳でもないので、どちらか言うと、優しくて親切で紳士的な先生だな、という感じですよね。
しかし、同じようなケースの時に、私だったらどういう対応をするかと言うと、このような会話は全くしません。
産科学的には、赤ちゃんが生まれる正期産の日は、妊娠の37周0日から41週6日まで、です。ですから、予定日から約2週間後まで、生まれる正常範囲ということです。
医学的に、分娩にしなければならない理由が母体側もしくは胎児側に存在した時には、もちろんそのようにしなければいけないのですが、それがない限りは、赤ちゃんが生まれたい日を待ってあげるのがいいと思っています。
赤ちゃんにも意思があると思いますし、誕生日別の占いの本が成り立っているように、赤ちゃんが生まれる日が一日でも違えば、人生も変わるのではないかと思います。
私が思うには、赤ちゃんが生まれた日によって、人生が左右させられている訳ではなくて、そもそも赤ちゃんその人が、その人でなければならない使命や役割があって、それを果たしやすくするために、親であるお父さんお母さんを選び、家を選び、誕生日を選び、生まれてくるのではないかと。
使命や役割を果たしながら歩んでいくのが人生であり、赤ちゃんが選ぶ、親や家や誕生日は、その人の人生の選択であると思うのです。
実際、私のクリニックで生まれた一番大きな赤ちゃんは4500g台ですが、4500g台の赤ちゃんを産んだ3人のお母さんは、全員経腟分娩されています。
ということは、大きさだけで言えば、大概のケースでちゃんと経腟分娩できる、ということです。
経腟分娩できずに帝王切開になってしまった方もおられますが、赤ちゃんの大きさだけではない、産科学的または赤ちゃんの意思など医学的とはまた違う、何らかの理由があったのだと思われます。
話を今日の本題に戻しますね。
前のお産の時に、主治医の先生は「赤ちゃんがこれ以上大きくなるとお産がきつくてしんどくなる」と言ったのですが、はたしてそれは本当でしょうか?
例えば、分娩進行中の妊婦さんが、陣痛があるたびに、「ああこれは赤ちゃんが2800g程度のしんどさだなあ」とか「ああこのきつさは3400g並みのきつさだなあ」とか考えたり感じたりするでしょうか?
現実的には、そういうことはほとんどないと思います。
実は、この先生の言葉で一番重要で問題なことは「赤ちゃんが大きいとお産がきつい」というパラダイムを、先生自ら妊婦さんに与えてしまった、ということです。
「赤ちゃんがこれ以上大きくなると」と言ったということは、「赤ちゃんは今もそこそこ大きいんだ」という意味を含んでいます。
ですので、先生の一言は妊婦さんに「赤ちゃんが大きいとお産はきついんだ、大変なんだ」という先入観を与えます。洗脳と言ってもいいかもしれません。
先生には、そこまでの深い意味はなく、医師としての、普通の常識の中で、むしろ親切心もあって発された言葉であったと思いますが、出産するお母さんからとってみたら結果的にトラウマになるほどの「大変なお産」になってしまっていますので、言葉は慎重に用いなければなりませんね。
もちろん、大変なお産となったのは、先生の発言によるものだけとは言えませんので、先生だけが悪いとか、そういうつもりは全くありません。
しかしながら、産科医や助産師は、お産をされる妊婦さんのコーチであるべきで、コーチとはその相手が結果を創り出すことをサポートしなければいけませんので、そういう意味では不適切な発言であった可能性もあります。
産科医および産科医療スタッフは、その一言一言が、妊産婦さんに、悪いパラダイムを与えているかもしれない、ということまで配慮して、丁寧に対応をしていく必要がありますね。
次回は、今日のお話に続けて『分別(ふんべつ)』についてお話したいと思います。
どうぞお楽しみに(*^^*)

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2019.05.13