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『お産とコーチング』10~分別(ふんべつ)|広島市安佐南の産婦人科 フジハラレディースクリニック

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コラムカテゴリー: その他

 前回、妊婦さんにとってのコーチである産科医や助産師は

「赤ちゃんが大きいと、お産はきつくて大変」というパラダイム(価値観の枠組み)を与えるべきではない
というお話をいたしました。
コーチの言葉は重く、相手に対して先入観を与えたり、洗脳までしてしまうこともあるからです。
しかし、この話にピンと来ない方も多くおられることでしょう。
なぜなら、世の中の大多数の方々が「お産は怖くて痛くて辛いもの」と思っているからです。これは、もしかしたら、昔も今も、古今東西、万国共通に、ほぼ普遍的なものとして思われているかもしれません。
以前、笑顔の『つぐお式出産』の様子の映像を横浜市の産婦人科医池川クリニックの池川明先生に観てもらったことがあります。
池川先生からは
落ち着いていて穏やかなお産で、正直びっくりした。藤原先生のところのお産は紛れもなく、すごく素晴らしいお産だと思う。しかし、時代の先を行き過ぎていて、まだ世の中がそれに追いついていない。藤原先生のところのお産は確実にいいお産なんだけど、かなりの希少ケースであるために、今の世の中の常識からすると、‘異常なお産’の分類になってしまう。
と言われました。
ベテランの産科医でも驚かれる訳ですから、一般の大多数の方々が「お産は怖くて痛くて辛いもの」「落ち着いてできるはずがない」「楽しめるはずがない」と認識しているとしても、何ら不思議はありません。
池川先生は、私の本『世界で一番幸せなお産をしよう!』の帯を書いてくださっていますし、先生のご著書の『笑うお産』の中では、笑うお産を実践している産院として、私のことを紹介してくださっています。
さて、話を少し変えましょう。
あなたにお子さんがいて、明日お子さんにとっての大事な試験がある、または何かの競技の試合がある、としましょう。
その時あなたが
「緊張しちゃダメよ。緊張しないでやるのよ。」
と言ったとしましょう。
試験や試合の前日や当日、程度の差こそあれ、多少の緊張はするものです。
ガチガチの緊張がいいかどうかはわかりませんが、適度な緊張は案外あった方がいいのかもしれません。
しかし、「緊張しちゃダメよ。緊張しないでやるのよ。」と言われてしまうと、「緊張はダメ」⇒「緊張すると力が発揮できない」⇒「悪い結果になる」と連想してしまう、つまり悪いパラダイムを与えてしまうことになるのです。
つまり、親御さんのちょっとしたその一言のために、お子さんを悪い結果に導いてしまうこともあり得る、ということです。
パラダイムって簡単に作れてしまうものなんですね。
じゃあ、こういう時に声をかけるとしたら、何と言ったらいいのか?
試験や試合の前日にお子さんに向かって、「どう?」と聞いてみます。(ちなみに、こういう質問をオープン・クエスチョン(開かれた質問)と言います)
それに対して、お子さんが「緊張してる」とか「不安があるの」と言ったならば、
あなたは「そう。緊張してる(不安がある)の。それだけ?」と返し、
それに対してお子さんが「うん。それだけ。」と言ったとしましょう。
そうしたらあなたは「そう。じゃあ大丈夫よ。緊張してる(不安がある)だけだから。」
これでOKです。
え? これじゃあ何も説明になってないし、説得できてないじゃん。
とお思いのことでしょうが、そもそも説明したり説得したりする必要はないのです。
お子さんの感情を「ただ」「受け取って」あげるだけで十分なのです。
本来、「緊張や不安があること」と「力が発揮できるかどうか」「いい結果となるかどうか」は、別のことです。
このように、本当に「有る」ことと、一見存在していたり関連があるように見えているけど実際には「無い」ことに、整理して区分することを『分別(ふんべつ)』と言います。
私たちは、普段の生活の中で、実は無関係なことを頭の中で勝手に結びつけてしまって、がんじがらめになってしまい、そのために力が発揮できなかったり、結果が得られなくなっていることは、かなりあると思います。
話をお産の話に戻すと、「赤ちゃんが大きい」という事実は本当に「有る」こととしても、そのことと「お産がきつくて大変」というのは実際の関連は「無い」こと、なのです。
もしも頭の中で勝手にそれらを結びつけていたとしたら、本当は関係なくても、きつくて大変なお産になってしまうでしょうね。
この「分別」のセンス、パラダイムシフトするにはかなり有効なものです。
どうぞお試しくださいね。

 

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2019.05.13